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貧困問題を選挙の争点に
再配分どころか富める者をますます富ます日本

 政府は、新型インフルエンザ対策を国家の危機管理に関わる重要な課題と位置付け、流行に備えた準備を進めている。そのことに異論はないが、まだ国内で亡くなった人はゼロ、日本は自殺者が一一年連続、毎年三万人を超えている。厚生労働省は、医療や介護、年金、保育など、やるべきことはまだまだたくさんあるだろう。

 二〇〇六年夏経済協力開発機構(OECD)は、日本で拡大する所得格差の分析を発表した。報告書によると、二〇〇〇年の時点で、日本の相対貧困率は一三・五%となり、アメリカの一三・七%に次いで二番目に悪い数字になった。相対貧困率とは、可処分所得の中央値の半分以下の家計の割合をいう。OECDが使った厚生労働省の『国民生活基礎調査』における日本の年間所得の中央値はほぼ四八〇万円なので、相対貧困率となるのは二四〇万円未満の人口。つまり、日本人の一〇人に一人以上が年間二四〇万円、月二〇万円未満で暮らしているのであり、この数が九〇年代半ば一一・九%と比べると2ポイント近く増えているという。
 給与の額面の段階での相対貧困率は一六・五%。これから税金を引いて社会保障を足すという所得再分配によって、このうち三%の人が相対貧困層から抜け出すことができる。最終的な可処分所得で相対貧困層となるのは一三・五%。一方、フランスは、給与の額面の段階では、二四・一%の人が相対貧困層に属しており、その割合はOECDの中で最も悪い。しかし、所得再分配の結果、可処分所得で相対貧困となるのは六%にとどまる。相対貧困率は給与の額面の段階の四分の一に減り、日本と比べて半分以下となる。フランスの所得再分配によって相対貧困から抜け出す一八・一%という数字はOECDの中で一番高く、日本の三%というのは一番低い。この数字に、日本とフランスの違いが凝縮されている。
 日本で格差が広がってきた理由は2つある。一つは非正社員の割合が増えつづけていることで、もう一つは日本の所得再分配の機能が脆弱であること、年収二〇〇万円以下で働く“ワーキングプア”が一〇〇〇万人を超え、全労働人口の五分の一を占めるまでになったことだ。

 日本で所得再分配機能が著しく低下した原因をたどって行けば、八〇年代半ばからはじまった“税制のフラット化”に行きつく。八〇年代前半までには七五%あった所得税の最高税率は、その後五〇%となり、さらに九〇年代後半には三〇%台にまで引き下げられる。同時に相続税も最高税率七五%から五〇%に引き下げられた。
 この二つの最高税率を引き下げた分を穴埋めするために導入されたのが所得の多寡にかかわらず一律の税金がかかる消費税で、当初三%だった税率はその後五%に引き上げられた。その結果、日本では所得再分配機能が低下し、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる社会となった。
 OECDのランダル・ジョーンズ氏は、「日本の子どもの貧困率は、一四・三%でOECD平均より2ポイント以上上回りました」「日本はOECD加盟国の中で、給与の額面から税金を引き、諸手当を加えた後で子どもの貧困率が増加する唯一の国であるという点です。つまり、子どもを持ちながら貧困層に属する家庭が諸手当で手にする額よりも、税金で差し引かれる額の方が多いことを意味します。税制や福祉が本来持っている貧富の格差を是正しようという働きから考えると、これは驚くべきことです」。

『フランスの子育てが、日本よりも一〇倍楽な理由』から

 デンマークの学者、イエスタ・エスピン‐アンデルセン氏は、「家族主義に基づいた社会政策が家族の形成を妨げているというのが、我々の時代のパラドックスである」とし、生涯にわたって女性の就労を支援すること、男性のライフススタイルを「女性化させる」必要性を説いています。
 確かに、「ワーク・ライフ・バランス」とは、単に仕事と私生活のバランスをとるということではなく、片方があるからもう一方も充実するというポジティブな相関関係であるべきだろう。
 アンデルセン氏はまた、「福祉国家に対する従来からの批判に、平等のために効率性を犠牲にするというものがある。つまり、福祉国家がもたらす社会的恩恵は、労働意欲を損ない、貯蓄性向を低下させるのではないかという批判である」。「しかし、こうした判定の論拠は、確固たる証拠というよりも、信条に基づいたものである。一般的に、経験に基づいた信用できる評価によると、福祉国家に起因する効率性の欠如は確認されていない。逆に、福祉国家は経済を強化しているとする議論には、かなりの説得力がある」としている。
 NPOもやいの湯浅氏は、「政府は救貧ではなく防貧を」と述べていた。まさに至言である。いずれにしろ、今年は必ず総選挙がある。選ぶのは私たち主権者だ。
 OECDは、二〇〇八年一〇月、各国の所得格差に関する最新のレポートを発表。それによると二〇〇五年の日本の相対貧困率は一四・九%となった。

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