■2016年 春闘要求 アンケート
賃金の不足感が増加だが…
「施設の赤字宣伝で、『あきらめ』を感じているのか?」
一方、職場環境の悪化が浮き彫りに
働きやすい職場に向けて
2016年春闘での要求アンケートは、25単組1867名分を集約しました。職場の不満で賃上げを望む声が昨年につづきトップとなっており、賃金の不足感は4万6千円超えで2年連続して増加し、賃上げは切実な要求となっています。
賃上げ要求がトップ
職場の不満に関する問のトップ3は昨年と変わらず「賃金が安い」(17・4%)が一番多く、次いで「人員が少ない」(16・3%)で、三番目が「休みが取れない」(13・7%)となりました。
また昨年より割合が増えたのが、(1)「経営状況悪い」2・6ポイント増、(2)「福利厚生悪い」2・5ポイント増、(3)「健康守れない」2・1ポイント増、(4)「休みが取れない」1・7ポイント増となりました。
「賃金が安い」の要求はトップであるももの「一時金少ない」とあわせて昨年より割合は減少しており、施設の赤字宣伝により「あきらめ」を感じているのかもしれません。また「休みが取れない」「健康が守れない」など職場環境の悪化に対する不満が増大していることが浮き彫りになっています。
年齢層が高くなるほど「苦しい」生活実態
生活実態では、「かなり苦しい」と「やや苦しい」を合わせた「苦しい」と答えた人は、昨年より3・4ポイント減少し、43・6%となりました。年齢別で見ると「苦しい」と答える割合が、年齢が高くなるほど多くなり、50歳代では過半数を超えています。逆に20歳代、30歳代では「まあまあ」の答えが過半数を超えており、高年齢層の賃金抑制の影響がでているものと思われます。
収入減は昨年より減少
収入と家計の設問では、「貯蓄の取り崩し」と「節約」をあわせて「収入減」と回答した人が、昨年より7ポイント減少し、今年29・5%となりました。年齢別では、年齢が高くなるほど「収入減」を訴える人は増え、50歳代では過半数を超えています。
2年連続のベースアップおよび一時金アップにより収入は増え生活実態も改善されたと答える人が増えていますが、年齢の高い世代は、2015年4月からの給与見直しによる引き下げの現給保障が続いており、賃金は上がらず生活は苦しくなっているもので、職員の生活を守るためには賃上げが必要であることが浮き彫りになっています。
不足感増加、賃上げ要求
「賃金の不足感」では昨年より平均1309円増加(昨年636円減少)しましたが、賃上げ要求額は昨年より減少し、平均2万6008円となりました。要求額の平均は、2006年まで減少傾向にあり、2007年春闘以降は増加傾向に転じて来ましたが、2012年から再び減少傾向にあります。要求額は切り上げて誰でも2万7千円の賃上げを要求し、併せて日赤の賃金体系が医労連の要求から見て下回ることから、体系是正含め4万円を要求としました。
医労連の要求根拠は、(1)定期昇給相当分(2%)5千円、(2)国民負担増の補てん2万5千円、(3)他産業との賃金格差分1万円の合計で4万円賃上げを要求しています。
全日赤のアンケート結果からも不足感は毎年4万円台で今年は増加しており、「もう我慢しない」という意味を込めて4万円を要求するものです。
「とても疲れる」増加
身体の疲れに関しては、昨年同様「とても疲れる」「やや疲れる」をあわせて95・7%が「疲れる」と答えており、昨年より0・4ポイント増加しています。また「とても疲れる」は昨年、過半数を超えましたが、今年さらに増加(昨年より1・9ポイント増)し53・4%になっています。
年代別では、20歳代から40歳代までは「とても疲れる」が過半数を超えており、職種別では、看護師が「疲れる」で97・2%と最も高く、昨年よりも増加し、「とても疲れる」も6割を超えています。
残業もサービス残業も変わらず
残業時間は、「ほとんどない」が0・7ポイント減少、「10時間未満」が0・6ポイント増加し、「30〜40時間」が1・1ポイント増加していますが、平均は14時間14分と昨年と変わっていません。
職種別では、一番多いのは「看護職」で全体の平均を上回っており、中には80時間を越える人もいます。次いで「医療技術者」で昨年一番多かった「事務職」は、約3時間減って三番目となりました。
年代別ではほぼ若年層ほど時間外が多く、20歳代では全体の平均を上回っているのは昨年と変わりありませんが、今年40歳代が約40分増加し2番目に多い年代となっています。
また、サービス残業も若年層が多く「20歳代」では平均約7時間半(昨年8時間)ものサービス残業があり、依然として約1人分の賃金をサービスしている結果となっています。職種別では「看護職」が一番多く平均6時間49分(昨年より6分増加)のサービス残業があり、全体の平均は、昨年と変わらず5時間37分のサービス残業となっています。
時間外手当請求に対して「能力問題」減「周囲」増
時間外手当を請求できなかったことがあるかの質問に対して「よくある」「たまにある」をあわせて80・5%が「できなかったことがある」と答えており、昨年より4・5ポイント増加し、「よくある」では、3・4ポイント増加しました。依然として約8割の人が「請求できない」状況にあり、その理由で一番多いのは、「自分の能力の問題」が約4割、次いで「周りがみなんしていない」が約2・5割と傾向に変わりはありませんが、「自分の能力の問題」が昨年より3・3ポイント、「請求してはいけない」が0・8ポイント減少し、「周りがみんなしていない」が3・9ポイント、「請求すると嫌味」が1・2ポイント増加しています。請求できない雰囲気が広がっている傾向にあります。
その他の回答で目立ったのは「短時間なので請求しない」が多くあり請求運動を引き続き強める必要があります。時間外手当を払わすことで増員の必要性が経営者にも伝わるものです。
年休取得日数は微増
年休の取得平均日数は昨年より0・3日増加し平均7・1日となっています。
年齢別では、若年層ほど取得日数は低く、職種別では回答者数の少ない医師・介護職・保育を除くと事務職が取得日数は一番少なく、次いで看護師、医療技術者、技術業務職となっています。年休を請求したことがあるかの質問に対して、「まったくない」と答えたのが、昨年より1・8ポイント減少し、「よくある」が0・4ポイント増加しており、年休を請求することは増えています。
請求しない理由では、「みんなが請求しない」と「職場に迷惑がかかる」がそれぞれ約3割となっています。請求しやすい雰囲気をみんなで作り、施設に「人手が足りない」ことを報せながら、増員を勝ち取ることで迷惑もかからなくなる考え方「年休請求は増員闘争」を広げる必要があります。
半数以上でハラスメント
ハラスメントの有無を聞いたところ「よくある」「たまにある」をあわせて「職場・施設にハラスメントがある」と答えたのが47%(昨年46・4%一昨年55・3%)と減少傾向が止まったように見えます。昨年は、本社のハラスメント防止ハンドブックの影響で減少しましたが、依然としてハラスメントを感じることが多い職場であり、さらなる防止策が必要となっています。
パワハラの種類では、「無視・冷淡な態度」が一番多く(昨年より1・6ポイント増)、次いで「嫌悪感など心理的追い込み」(昨年より0・4ポイント増)「何度もミスを一方的に非難」(昨年より1・2ポイント増)となっています。
年齢別では20歳代では「何度もミスを一方的に非難」が2番目に多く、30歳代と50歳代では「有休休暇を与えられない」が3番目で、40歳代はでは昨年50歳代に多かった「必要な情報や知識を与えない」が3番目となっています。
若年・看護師は疲労蓄積仕事による負担大
「疲労蓄積度チェック」の設問の内容は、厚生労働省が平成14年2月に「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定した際に、自分自身で判定するためのチェックリストとして示したものです。
全体の平均では「自覚症状」14・4点と疲労度の区分では4ランク(5ランク中)と疲労は蓄積しており、「勤務状況」は3・8点で、総合評価ではIIIと「仕事による負担やや高いと考えられる」結果となりました。
年代別で20歳代と職種別で看護師が「仕事による負担高いと考えられる」と平均を上回っています。
安保法制は「憲法違反」と「わからない」が多数
全日赤独自の設問で「安保法制(戦争法)は憲法違反の法律と思うか」に対して、「憲法違反である」と答えたのは、回答者中45・4%と一番多く、次いで「わからない」が44・8%となっています。全回答者数から「未回答」と「わからない」の合計は約6割になり、職場での宣伝不足、議論不足が浮き彫りになっています。
また集団的自衛権に関する問に対して、「必要」と考えている人が36・3%と一番多く、政府の宣伝を真に受けている状況にあり、宣伝・学習を強める必要があります。しかし、「必要ない」「憲法違反」をあわせると約半数は「行使容認反対」と答えています。引き続き安保法制(戦争法)廃止の運動を広げる必要があります。 |