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機関紙「日赤労働者」

ILO・欧州視察に参加して
本部 森田しのぶ
日本医労連 21年ぶりのILO訪問
働く者の健康と労働条件改善を痛感

はじめに

 5月11〜17日、日本医労連企画でジュネーブILO(国際労働機関)、ICN(国際看護師協会)、パリCGT(フランス労働総同盟)訪問に参加しました。
 牛久保秀樹弁護士を団長として、郵政産業ユニオン・全教の皆さんと総勢34名での訪問で、日本医労連からは18名の参加、現地で通訳・案内役の全労連布施国際局長とJAL不当解雇撤回原告の坂井副操縦士と合流しました。

ILOとは

 訪問内容の前に、「ILOとは何か?」―簡単に紹介します。ILOは、1919年ベルサイユ条約によって設立され、「世界の永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立する」というILO憲章の上に成り立っている。本拠は、ジュネーブに国際労働事務局を置き日々活動。ILOは、国連機関の中では独特の三者構成(政府・労働者・使用者の代表)で、毎年総会では最低限度の国際基準や政策を設定するとともに、各分野での活動を行っている。

視察の日程

 日程は、ILOを5月12日・13日、ICNを5月13日、CGTを5月15日に訪問。懇談内容は、5月12日は、(1)ACTRAV(労働者活動局)、(2)労働者活動局国際基準専門家(ILO監視機構とACTRAVシンポを受けての非正規労働に関する討議)、(3)部門別活動局ヘルスケア(149号条約・看護職員条約に関して)。5月13日は、(1)結社の自由委員会2844号案件(JAL解雇事件)&122号条約(雇用政策)に関して、(2)187号条約(労働安全)に関して&ACTRAVからのまとめ、(3)171号条約(夜業条約)に関して、(3)と平行してICN訪問・懇談。5月15日は、CGT本部を訪問し、CGT医療社会保障行動労連との懇談&サンペトリエール病院見学を行う。

ILO訪問

 ACTRAV(労働者活動局)は、労働運動とILOを結びつける窓口&政・労・使三者とのブリッジの役割を果たすため、実状把握と条約の批准&実施状況をみていく。主な活動は、監視機構と労働組合強化・結社の自由。ILOで作成した条約は、あくまで最低基準・ミニマムな国際基準であり、国内法で明記するとともに守られなければならない。そのためにも、労働者と組合のキャパシティーをあげる必要がある。移民労働、非正規&不安定労働、障がい者など不平等が拡大。重要なのはディーセントワーク(最低賃金確保、安全衛生・ライフバランスの問題、作業編成)、企業形態に対して組合から対応を見つけていく。

条約批准が第一歩

 149号(看護職員条約)条約に関して…対応頂いたクリスチャン・ヴィスコー氏(ヘルスケア担当)は、冒頭、「今日は国際看護師デー、重要な役割を果たしている看護職員に敬意を表する」と挨拶。
 参加者の大半が看護師だったので、条約の内容の説明ではなく質問形式での意見交換を行った。懇談で印象深かった内容として、「看護職は患者のために自分の健康を犠牲にするが、患者への最善のサービス提供はできない。安全提供は、本人が健康であること」。日本での法律を変える運動について、「まず“批准”して法的拘束を課すことが第一歩のグランド。批准すれば、監視機構が働ける。そのためには、すべての関係者に対して社会対話を行い政府に働きかけること」とのアドバイス。看護分野で、部門別会議やILOとWHO(世界保健機関)共同委員会設置を要請した。ILOとWHOが共同で職場改善モジュール(8項目、5項目は安全衛生、3項目は人事・環境に関して)を作成。

ICN訪問

 ICN(国際看護師協会)は1889年設立で、現在、130以上の加盟組織、1600万人以上を組織している国際的な看護師団体。事務所は、レマン湖に近いビルの一角にある。活動は、(1)看護規制(教育を含む)、(2)専門看護実践、(3)社会経済福祉(SEW)の3つの柱で構成。SEWの中には、労働時間・報酬・労働安全衛生の問題、看護師の高齢化・人口の高齢化の問題、災害対応、移民、医療の人材育成も含まれている。

看護師配置が多いと患者死亡率は下がる

 看護師の配置数について近年の研究結果から、一人の看護師の患者受け持ち数が増えることによって患者の死亡率が上がる、看護師配置が増えると死亡率は下がる。看護師人数が多いと、注射・挿管事故、針刺し事故、転倒事故などが少ない。ジェンダー問題、看護師賃金(同一労働・同一賃金が原則)、地位向上等幅広い活動内容について説明を受ける。病院協会、医師協会、薬剤師協会などとも一緒に活動することが必要と強調される。配置人員数が多いと患者の安全も守れることが、紹介頂いた内容から分かり今後の運動の確信にもなる。

病院見学

 サルペトリエール病院見学…400年前貧しい人々を救済するために設立。敷地面積33ヘクタール、病床数1700床(1600床/1日稼働)、77診療科、外来1万5000人/日、職員1万人(看護師&看護援助士2800人)、1病棟30〜32床・個室(シャワー・トイレ付)。敷地内に17世紀建造のチャペル・中庭等あり、広大な敷地のため組合事務所も複数設けている。

CGT訪問

 CGT(フランス労働総同盟)医療社会保障行動労連との懇談…フランスの週労働時間は35時間、夜勤勤務者は週32・5時間(年平均労働)。看護師の77%が女性。勤務間隔12時間明ける規則あるが、守れていない現実があり守られるよう運動している。夜勤専従&8時間3交替は減少、12時間夜勤が増えている。正規・非正規同じ条件で勤務。看護職は優遇措置として、定年より5年位早く退職が可能で年金生活できる(早期年金制度)。人権の国と言われているが、病院は人権無視されている。すべての労働条件が以前より悪くなっている。年休は25日/年(土日除くため約5週間)、法律で決まっているので雇用者に取らせる義務があり、翌年への持ち越し、お金に換えることはできない。

おわりに

 ヨーロッパも日本同様、医療・社会保障の改悪、公務員等の削減が進んでいるが、それに対して訪問当日もストライキ&デモがおこなわれていた。今回、改めて人々の健康を守るためには、私たち従事者の健康と労働条件改善が必要だと感じた訪問でした。訪問の機会を与えて頂いたことに、紙面をお借りして感謝申し上げます。(訪問の詳細は月刊「医療労働」7月号をご一読下さい)


ILO(国際労働機関)訪問に参加して
私たちの働きかけが大切
本部 山口早苗

 20代半ば私が労働運動に出合ったころ、国連の一機関であるILOでは世界規模で働くルールが決められ、国際労働法という体系となっていることを知りました。しかし当時はよく分からず、あまり気にしていませんでした。

※   ※

 私が組合に携わるこの数年の間、日本の労働市場は大きく変わりました。職場での労働強化、非正規雇用の増大、ブラック企業の増加、若者の過労死が起こり、また、それが当たり前のように感じられる空気感が日本社会全体を覆っています。そんなとき、「日本の常識は世界の非常識」という声をよく聞きました。私は日本の状況しか知らないため世界の常識を知りたいと感じるようになりました。

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 日本医労連がILO149号条約(看護職員条約)の批准運動を進めるために今回の訪問を企画し、ぜひこの機会にと参加しました。日本医労連のILO訪問は21年ぶりとのことで、ILOでは日本の看護師の状況を訴え意見交換などおこないました。
 ILOからは日本の現場の情報が知れ有意義だと云われ、意外ですがILOが持つ情報は多くはなく、こちら側の働きかけが重要であることを知りました。

※   ※

 今回の訪問は日本で未批准の条約批准を目指し、また少なからず各国政府や使用者団体とともに活動するILOに日本の医療現場の実態を報告し、郵政やJALの仲間とともに日本の労働市場の現状について意見交換できたことは大変良かったのではないかと思っています。
 また、今後も私たちの労働現場をよりよくする手段としてILO条約批准やILOの活用を継続していくことが重要だと感じました。

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