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機関紙「日赤労働者」

日赤厚生年金基金の制度改定について

 本社および日赤厚生年金基金では、賃金の引き下げや正規職員の減少、低金利による運用が予想を下回っていることから、「年金基金制度および退職金の支給割合の見直しを検討する時機にきている」として、「あり方検討委員会」を2007年6月に発足させ議論を重ねてきました。
 しかし、2009年9月には厚生労働省の基準に抵触し、猶予期間後の2012年度(2012年4月〜)には制度改定を行わなければならない状況にあります。この度、本社より改定案の提案があり、団体交渉にて追及した結果、あり方検討委員会の「まとめ」として制度改定案が提示されました。

制度改定(案)内容のあり方委員会説明

運用利回り3・5%

 予定利率5・5%の運用収益を見込めば、掛金の引き上げは行わなくても現行の給付水準を維持できるわけですが、平成20年度末での通算運用利回りが1・29%となっているなか非現実的な計画であることは火を見るより明らかです。
 現実的な数字として、2010年3月23日に開催された第18回「あり方検討委員会」では「予定利率は3・5%として今後の議論を進める」ことにしました。他の厚生年金基金において利率の見直しを行った基金のなかで3・5%あたりを設定するところが多くあることや、サブプライム問題以前(平成18年度末まで)の日赤厚生年金基金での通算運用利回りが3・86%であったことなどを考慮しながら3・5%を設定しました。

全社的福利厚生事業の見直し

 全社的複利厚生事業のなかで、委託会社との契約でサービス提供を受けていた「保養・宿泊及び生活支援サービス事業」については、同様のサービスがインターネット等により個人でも享受できる環境になったことにより、全社的福利厚生事業としての利用頻度が低下しており、費用対効果の面から事業を廃止することにしました。
 そしてその事業に要した費用を基金財政に移譲することにしました。その額は約2億3000万円(年額・平成21年度決算報告より推計)であり、掛金率に換算すると0・2%に相当します。これを労使それぞれの負担割合の軽減にあてることにしました。

掛金率は全体で1・0%引き上げ

 現行の加算掛金は、加算給与月額の4・9%(事業主1・9%+加入員1・1%+事業主の特別掛金1・9%)ですが、現時点での利回りを基に計画するとなると、掛金は16・2%(利率2・0%、開始年齢62歳で試算)にもなってしまいます。また予定利率3・5%にしても現行の給付水準を維持するためには、13・2%(8・3%増)まで引き上げなければなりません。そこで給付水準を引き下げることにより、負担増加を軽減することにします。
 負担増加は、労使共に負担が重くなることから1〜2%増までにする方向で議論を重ねてきました。提案している給付水準にするためには全体で1・0%引き上げて、全体の掛金率を5・9%とする試算結果となりました。
 ただし、平成22年度での運用実績を踏まえて計算し直す必要があり、仮に平成22年度の運用がマイナス10・0%の場合には、全体でさらに1・0%の引き上げが必要となります。

労使負担割合について

 全体で1・0%引き上げの労使負担割合は次のとおりとします。
 (1)事業主…現行3・8%から0・9%引き上げ4・7%とする。(普通掛金1・9%+特別掛金1・9%+引き上げ1・0%マイナス財源移譲0・1%)
 (2)加入員…現行1・1%から0・1%引き上げ1・2%とする。(普通掛金1・1%+引き上げ0・2%マイナス財源移譲0・1%)

表

加算給与月額上限30万円に引き上げ

 現行制度では、掛金の算定基礎となる加算給与月額に25万円という上限を設けて、それ以上の給与に対しては、上限額で計算しています。制度発足当時より上限額は据え置かれており、現在の給与水準を考慮し改定案では上限額を30万円に引き上げて増収策としています。

加入員負担増は月々850円以下

 掛金率の改定および加算給与月額の上限引き上げに伴う加入員の負担増は、給与月額が25万円までは0・1%増ですが、25万円から30万円では、0・1%〜0・3%増となり、30万円以上では0・3%増となります。負担増の額は表のとおり850円が上限になりますので、「加入員は、月々850円以下の負担増」と言えます。
 一方、事業主負担の増加は1人当たり平均で3,299円、日赤全体で約22億6000万円になり、平成22年度決算の結果、さらに1・0%の引き上げとなった場合には、1人当たり平均で5,914円、日赤全体で約40億5000万円となります。

老後の生活費を考慮した段階的給付水準引き下げ

 給付水準について、保証期間(現行の10年を維持)は現行水準の4分の3(公的年金と併せると7・4%の引き下げ)にし、保証期間後は現行の給付水準の2分の1(公的年金と併せると14・9%の引き下げ)にします。額にすると、たとえば勤続40年で退職した場合には現行制度では、月額32万3000円(加算年金9万6000円+公的年金22万7000円)が、62歳から71歳までは29万9000円(加算年金7万2000円+公的年金22万7000円)、72歳以降は27万5000円(加算年金4万8000円+公的年金22万7000円)となります。この年金額は全国消費実態調査(総務省)による1カ月の消費支出を65歳以上で上回るものとなっています。

グラフ

給付開始年齢は62歳に引き上げ、合わせて繰り上げ減額支給の条件緩和

 給付開始年齢は、現行の60歳から日赤の定年年齢の62歳にまで遅らせます。同時に、繰り上げ減額支給(支給額を減額して給付開始年齢より前から支給)の条件を緩和し、現行では「傷病・疾病・施設の廃止などの場合、55歳から59歳まで」としていましたが、これを「本人の希望により55歳から61歳まで」に改めます。

グラフ

勤続15年以上退職者への給付底上げ

 加算年金B(15年以上勤続で加算年金A以外の者)の現行は、掛金に事業主1割上乗せしたものを予定利回りを5・5%で計算した額を年金化することになっていますが、事業主1割上乗せを残しながら運用利回りを3・5%にした場合でも、改定率が75%に届かない状況となることから、最終提案では加算年金Aとのバランスを考慮し、改定率を保証期間の10年間は現行の75%、保証期間後は現行の50%となるように制度設計を行うこととします。選択一時金は年金額をもとに計算することとします。

脱退一時金の事業主1割上乗せは廃止

 現行制度における脱退一時金の原資として掛金に事業主が1割上乗せする制度は、制度設計当時の定期預金利息が、加算部分の予定利回り5・5%を上回っていたことを考慮し制度化されたものであり、今回の制度見直しに当たっては事業主の1割上乗せは廃止し、予定利回りは3・5%とします。このことは退職時に掛金に3・5%の利息がついて戻ってくることと同じと言えます。

改訂前の受給者および待期者は現行制度

 受給者(既に年金を受給している退職者)の給付減額に対する厚生労働省の判断基準が(1)母体企業の経営状況が著しく悪化していること、(2)受給者の3分の2以上の同意を得ることになっています。
 最近の事例でJALは経営破綻の状況のもと受給者の給付減額が承認されましたが、NTTの場合には3分の2以上の同意を得ていても「著しい経営悪化とは言えない」として厚生労働省は受給者の給付減額を不承認としました。
 NTTはこれを不服として裁判を起こしましたが、平成22年6月に最高裁は厚生労働省の判断を支持しNTTの訴えを退けました。日赤においても受給者の減額は、NTTと同様に承認が得られないものと判断しました。

激変緩和のための経過措置

 経過措置の対象者は、「制度見直し時点で57歳以上かつ見直し後5年の間に加算年金Aで退職した者」としますので、まず2011年度末までに57歳になっている人(1955年4月1日以前に生まれた人)が経過措置の対象となります。尚かつ2012年4月1日から制度見直しを予定しますので、見直し後5年間(2016年3月31日まで)のうちに加算年金Aで退職した者となります。

 経過措置の内容は、支給開始年齢は62歳からとなりますが、支給開始から5年間は現行水準を維持した給付額とします。また、繰り上げ減額支給(20年以上55歳〜61歳で退職)で退職した者に対する支給額の計算は経過措置分を上乗せしたもので計算します。

 例えば、勤続20年以上で、現在(2010年度)56歳の職員が2012年3月末までに退職した場合は、現行制度での退職となり60歳から現行の支給額が給付されます。制度改定前に57歳となっていますので経過措置の対象となり、改定後5年間(2012・4・1〜2016・3・31)の内に退職した場合は、支給開始年齢は62歳からとなりますが、給付水準については、開始後5年間(66歳まで)は現行水準を維持します。その後、保証期間(給付開始から10年間)が終わる71歳までは、現行制度の75%、それ以降は50%になります。

表

全日赤の対応

 日赤厚生年金基金の制度改定案は、「掛金を引き上げて給付を下げる」という改悪であり、許せるものではありませんが、金融情勢の変化に伴い基金制度発足当初の運用益が望めないことも確かであり、日赤厚生年金基金制度を維持するためにはやむを得ない制度改定であると考えます。

 全日赤は、制度改定の議論が本格化してきた2010年2月の「全日赤2009年度第2回中央委員会」において、制度改定に対して、(1)生活できる年金給付額の確保、(2)現制度の適用者の拡大、を考え方の基本とすることを確認し、同年7月の「全日赤第65回定期全国大会」においては、具体的方向性に対する考え方も確認しながら「あり方検討委員会」での議論や団体交渉に臨んできました。
 重要な局面では互選代議員の意見も聞きながら対案ともいえる「今後の課題と全日赤の対応」および「今後の課題と全日赤の第二次対応」を示しながら基金事務局に試算もさせてきました。

全日赤の対案実らず

 「今後の課題と全日赤の対応」のなかで提案した給付水準(現行制度の83%・96,000↓80,000)とするためには、概算で掛金率が8・4%(3・5%の引き上げ)にもなってしまうことが事務局より提示され、また提案した給付水準で掛金率の増加を1%にした場合には、運用利率が4・7%なければならないことも提示されました。全日赤本部は、全日赤案の給付水準は現実的でないと判断し、基金事務局案を認めざるを得ませんでした。

 「今後の課題と全日赤の第二次対応」のなかでは、激変緩和のための経過措置の第二次案(経過期間を5年間とし、経過期間中に55歳以上で退職した職員は経過期間中に限り現行制度を適用すること。ただし6年目以降の給付額は改訂後の額とする)を提示しましたが、基金制度として経過措置として保証期間における個々の給付内容に違いがでることは認められないとの見解から第二次案の追求を断念せざるを得ませんでした。

経過措置をとらせる

 しかし、全日赤をはじめとする日赤内他労組からの意見も汲み入れたものとして最終的な事務局提案となっています。経過措置を取らせたことや加算年金Bへの給付底上げ、繰り上げ支給の緩和、全社的福利厚生事業の見直しなどにつながりました。
 また、全日赤が当初より主張していた「生活できる年金給付」は、あり方検討委員会でも賛同を得られ、給付内容変更議論においても生かされました。

 全日赤は、第22回あり方検討委員会での「基金加算年金見直し案のまとめ」による制度改定案を受け入れる姿勢で交渉および協定の改定作業に臨みます。

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