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機関紙「日赤労働者」

日赤厚生年金基金を維持するために制度改定に賛成します

 近年の低金利情勢による運用益の低下から、日赤厚生年金基金の掛金および給付を見直す必要があり、議論を重ねた結果として提案されている制度改定については、基金制度を維持するために全日赤は賛成します。

見直しの理由と目的

 年金制度の「給付」は、集めた「掛金」とそれを運用して得た収益「運用益」でまかなわれます。将来にわたってバランスが保たれるように設計します。日赤厚生年金基金が発足した当時(1992年・平成4年)は、高金利が望める時代であり、予定利回りを5・5%として加算部分の制度を設計しました。その「運用益」を見込んだうえで「掛金」と「給付」が設計されています。しかし、平成20年度末での通算運用利回りが、1・29%(平成22年度末1・73%)しかなく将来にわたって制度が維持できなくなっています。厚生年金の財源の一部を国に代わって運用している基金制度ですので、厚生労働省の基準に照らして判断されますが、2009年(平成21年)9月には、厚生労働省の基準に抵触し掛金を上げなければならない状況となりました。しかし制度見直しを行うことを条件に2年間の猶予期間が設けられたので、その届出を行い2012年度(平成24年4月)から制度改定を行わなければならない状況にあります。
  日赤厚生年金基金代議員会では、日赤厚生年金基金制度を将来にわたり維持することを目的として制度改定を行うこととしていますが、全日赤では「老後に生活できる年金とする」ことを主張し、そのことを念頭におきながら改定(案)を策定させました。

改定の内容

加算年金の見直し

 日赤厚生年金基金は、いわゆる「3階建」(1)国民年金(基礎年金)+(2)厚生年金+(3)基金(厚生年金代行部分+「加算部分」)
になっており、今回の改定は「加算部分」の改定となります。

予定利回りの見直し

 現行の予定利率5・5%を3・5%に設定し直します。他の厚生年金基金においても利率の見直しで用いている数字であることや、サブプライム問題以前(平成18年度末まで)の日赤厚生年金基金での通算運用利回りが3・86%であったことなどを考慮し設定しました。

支給開始年齢の引き上げ繰り上げ支給の条件緩和

 給付開始年齢は、現行の60歳から日赤の定年年齢の62歳にまで遅らせます。同時に、繰り上げ減額支給(支給額を減額して給付開始年齢より前から支給)の条件を緩和し、現行では「傷病・疾病・施設の廃止などの場合、55歳から59歳まで」としていましたが、これを「本人の希望により55歳から61歳まで」に改めます。

給付水準の引き下げ

 給付水準について、保証期間(現行の10年を維持)は現行水準の4分の3(公的年金と併せると7・4%の引き下げ)にし、保証期間後は現行の給付水準の2分の1(公的年金と併せると14・9%の引き下げ)にします。額にすると、たとえば勤続40年で退職した場合には現行制度では、月額32万3000円(加算年金9万6000円+公的年金22万7000円)が、62歳から71歳までは29万9000円(加算年金7万2000円+公的年金22万7000円)、72歳以降は27万5000円(加算年金4万8000円+公的年金22万7000円)となります。この年金額は全国消費実態調査(総務省)による1カ月の消費支出を65歳以上で上回るものとなっています。

激変緩和の経過措置

 経過措置の対象者は、「制度見直し時点で57歳以上かつ見直し後5年の間に加算年金Aで退職した者」としますので、まず2011年度末までに57歳以上になっている人(1955年4月1日以前に生まれた人)が経過措置の対象となります。かつ見直し後5年間(2016年3月31日まで)のうちに加算年金Aで退職した者となります。
 経過措置の内容は、支給開始年齢は62歳からとなりますが、支給開始から5年間は現行水準を維持した給付額とします。また、繰り上げ減額支給(20年以上55歳〜61歳で退職)で退職した者に対する支給額の計算は経過措置分を上乗せしたもので計算します。
 例えば、勤続20年以上で、2011年度中に57歳になっている職員が、制度改定前2012年3月末までに退職した場合は、現行制度での退職となり60歳から現行の支給額が給付されます。4月改定後5年間(2016年3月31日まで)に退職した場合は、経過措置の対象となり、支給開始年齢は62歳からとなりますが、給付水準については、開始後5年間(66歳まで)は現行水準を維持します。その後、保証期間(給付開始から10年間)が終わる71歳までは、現行制度の75%、それ以降は50%になります。

脱退一時金の事業主1割上乗せは廃止

 現行制度における脱退一時金の原資として掛金に事業主が1割上乗せする制度は、制度設計当時の定期預金利息が、加算部分の予定利回り5・5%を上回っていたことを考慮し制度化されたものであり、今回の制度見直しに当たっては事業主の1割上乗せは廃止します。

全社的福利厚生事業の見直し

 全社的複利厚生事業のなかで、委託会社との契約でサービス提供を受けていた「保養・宿泊及び生活支援サービス事業」については、同様のサービスがインターネット等により個人でも享受できる環境になったことにより、全社的福利厚生事業としての利用頻度が低下しており、費用対効果の面から事業を廃止することにしました。そしてその事業に要した費用を基金財政に移譲することにしました。その額は約2億3千万円(年額・平成21年度決算報告より推計)であり、掛金率に換算すると0・2%に相当します。これを労使それぞれの負担割合の軽減にあてることにしました。

加算給与月額の上限を引き上げ

 現行制度では、掛金の算定基礎となる加算給与月額に25万円という上限を設けて、それ以上の給与に対しては、上限額で計算しています。制度発足当時より上限額は据え置かれており、現在の給与水準を考慮し改定案では上限額を30万円に引き上げて増収策とします。

掛金率の引き上げ

 加算掛金は、加算給与月額に現行では4・9%(加入員1・1%+事業主1・9%+事業主の特別掛金1・9%)を乗じた額となっていますが、これを6・8%(加入員1・2%+事業主2・0%+事業主の特別掛金3・6%)に引き上げます。

加入員は、月々850円以下の負担増

 掛金率の改定および加算給与月額の上限引き上げに伴う加入員の負担増は、給与月額が25万円までは0・1%増ですが、25万円から30万円では、0・1%〜0・3%増となり、30万円以上では0・3%増となります。負担増の額は850円が上限になりますので、「加入員は、月々850円以下の負担増」と言えます。

全日赤の対応

 日赤厚生年金基金の制度改定案は、「掛金を引き上げて給付を下げる」という改悪であり、許せるものではありませんが、金融情勢の変化に伴い基金制度発足当初の運用益が望めないことも確かであり、日赤厚生年金基金制度を維持するためにはやむを得ない制度改定であると考えます。

 よって全日赤は、改定案に賛成し、日赤厚生年金基金加算加入員に対して、改正案に同意するよう呼びかけます。
  全日赤をはじめとする日赤内他労組からの意見も汲み入れたものとして最終的な事務局提案となっています。経過措置を取らせたことや加算年金B(15年以上勤続で加算年金A以外の者)への給付底上げ、繰り上げ支給の緩和、全社的福利厚生事業の見直しなどにつながりました。また、全日赤が当初より主張していた「生活できる年金給付」は、あり方検討委員会でも賛同を得られ、給付内容変更議論においても生かされました。

よくある質問

Q 基金制度を維持させることのメリットは何ですか?

 厚生年金基金制度を廃止するということは、日赤職員も一般の厚生年金のみとなり次のメリットが無くなります。
 (1) 引き下げを余儀なくされた加算年金(満額で、10年間は月額7万2000円、その以降終身で4万8000円)はゼロになります。
 (2) 代行部分の上乗せもなくなります。
 (3) 選択一時金や脱退一時金もなくなります。加算年金受給資格の勤務年数(15年以上)までに退職する者にとってみても、3・5%の利率で貯蓄できたものがなくなることになります。
 このように日赤厚生年金基金制度は、給付額や受給資格の面(1カ月加入すればよい)においても通常の厚生年金よりも手厚くなっており、制度を維持することは日赤職員にとって大変重要な労働条件のひとつであると考えます。

Q すでに給付を受けている人にも負担をお願いできないのですか?

 すでに給付を受けている人(受給者)は、年金以外の収入が限られており、給付を引き下げると現在の生活に大きな影響を及ぼすことと、受給権保護の観点から法律上で保護されています。やむを得ない理由がなければ、受給権を侵して給付を引き下げることは法律上できません。例えばNTTの判例をみても母体企業の経営が破綻した状態でない限り、受給者に対する給付の引き下げが不可であることが明らかとなっています。
 日赤の場合に当てはめてみて、たとえ受給者が合意しても給付引き下げの承認が得らる可能性はないことから見直しの対象外としました。

Q 制度改定案が否決されればどうなりますか?

 今回の制度改定(案)が成立しなければ、2012年4月以降ただちに事業主の特別掛金を値上げすることになります。施設側の負担は、加算掛金と特別掛金の合計が、現行3・8%であるのに対して、改定案が否決されると6・1%に増えることになります。金額にすると1人平均5442円(平成21年給与より推定)増えることになります。
 また現行の給付水準を維持したまま予定利回りを3・5%とすると事業主の掛金率は12・7%が必要となり、金額にすると1人平均3万円にもなります。これでは施設が持ちこたえられなくなって制度崩壊へとつながることが予測されます。

Q 制度改定前に退職するのが有利ですか?

 よくある質問の1つに「いつ退職すれば有利か」と聞かれますが、専門家も「寿命と相談して下さい」と答えるように、年金額だけで見ても長生きすれば生涯にわたる年金額は増えることになります。制度改定前に退職すれば現行の制度が適用されますが、定年1年前だとすると1年間の年収は入らないことになります。制度改定前に退職した場合と1年間働いて改定後に退職した場合を比較したときに、1年間の年収約600万円とすると、だいたい80歳以上生きる場合には改訂前に退職した方が生涯にわたる収入は多くなります。
 そのほかに、退職すれば健康保険も国保に入ることになりますし、3号被保険者の配偶者がいる場合には、国民年金に加入することなり、事業主が負担しているものはなくなることになります。支出の方も増えることに注意する必要があります。また、老齢基礎年金や老齢厚生年金の「年金額の調整部分」は、長く働く方が給付額は増えます。

同意の仕方について

同意書は、加入員本人の自筆による署名(プリント印字とゴム印は不可)と認印が必要です。11月中の取り組みとなります。

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