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蟹工船ブームが続いていますが、葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』を紹介したい。かつては教科書に載っていたこともある、プロレタリア文学の代表作だそう▼男が仕事中にセメント樽の中から、木の箱に入った女工が書いた手紙を見つける。恋人が破砕機に巻き込まれそのままセメントになってしまった。この樽の中のセメントはどのような用途に使われたのかお返事ください、というものです▼読んだ後に様々な感情に襲われる不思議なこの作品は、インターネットの青空文庫でも読むことができます▼先日、セメント輸送運転手が過労死寸前まで働かされているのに賃金も一方的に下げられたため、ユニオンに加入してたたかう姿を撮ったドキュメンタリーを観ました。印象的なのは、主人公がこの映画の題名にもなった「これからは『フツーの仕事』がしたい」と語る場面です▼彼の言う「フツー」とは定時には帰れて、時間外をしても払われること。この青年労働者はそれまで月五五二時間(!)も働かされていました。それまではそれが「フツー」のことだと思っていたのです▼「ここではないどこかで、あなたではない誰か」が描かれているのが小説ですが、あなたが誰かと出会い、つながり、広がる。そうした物語の主人公に、誰もがなれるのが労働組合なのではないか。
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