■赤十字医療施設 キャリア開発ラダーアンケートのまとめ
1.はじめに
日赤本社看護部が、二〇〇六年三月から全国の医療施設ですすめている「赤十字キャリア開発ラダー」が実施されて、様々な問題点が浮かび上がっている。本社看護部は、「継続教育の現状と導入に至った経緯」のなかで、「出産、育児等の大きなライフイベントを重ねながら看護師を続けるものも増えている。・・・個々のライフスタイルに合った学習課題や目標が明示される能力開発の体系化が求められている」と説明(※)しているが、果たして実際の取り組み状況はどうなのか、そして、研修の時間帯や勤務との関係はどうなのか、研修を受けている個人の気持ちはどうなのか、実態をあきらかにしたいと考え、全単組へアンケートの取り組みの依頼をおこなった。
※ 「キャリア開発ラダーの導入の実際」日本赤十字社事業局看護部編
2.調査方法
二〇〇八年三月に、アンケート用紙(別紙)の清刷りを全単組へ下ろし、取り組みを依頼したが、実際に実施した単組は、広島・庄原・京一・長野・安曇野の5単組であり、アンケートに回答した総数は三七七名(女性三六七名、男性一〇名)という結果であった。研修に関わる問いのためか、取り組みにくいアンケートであったことが伺われる。
3.まとめ
(1)基礎調査では、三〇代が四割、二〇代が三割五分、残りが四〇代と五〇代であり、既婚未婚は半々であった。子育てについては、就学前の子を育てている人が一割五分であった。
三〇代以上が六割五分を占め、職場の中堅以上の人たちが回答してくれたのではないかと考える。
(2)レベルIだけ実施している人が一割であり、全レベル実施している人は五一名(一三・五%)ですが、半数を超える人が不明ということは、どういうことなのか、(3)で一部に参加できた人が二二九名いることを考えると、自分がどのレベルの研修を受けているのかはっきりわかっていない人が多い事ではないのか。
(3)研修時間は半数がすべて時間外という回答であった。自由記載のなかに、時間外研修について「新人のOJTは時間内にやられるのに、ラダーは時間外のうえに残業にならないのは不満」「仕事で疲れているのに、時間外の研修が負担」という記載があり、ラダーを負担に感ずる理由になっている。
(4)研修参加の気持ちやラダーに取り組む気持ちについての問いには、積極的に取り組んでいる人は七〜八%であり、七割が少ない多いの違いはあるが、負担に感じている。仕方なくやっている人が、四割であり、やってみたが止めた人が四・五%いた。九八名(二六%)は取り組んでいない。
(5)ラダーに取り組んで何に困っているかの問いには、一番多かったのが「希望する研修に行きたい」が一〇一名(二六%)であった。研修が負担は四三名(一一・四%)であり、レポートの義務が困ると考えている人が四五名(一一・九%)であった。また、研修が強制になっていることを問題と考えている人が二八名(七・四%)いた。
(6)ラダーが看護のレベルアップになっているかについての問いには、なっていると、ややなっているを合わせると一二六名(三三・一%)が肯定的に答えている。なっていないは五〇名(一三・三%)であった。なんとも言えないが一四八名(三九・三%)で、始まったばかりであり、判断がしにくいというところであると思う。
4.終わりに
回答数が三七七と少ないために、断定したことはいいにくいが、そのなかでも六割を超える人たちがなんらかの研修に参加しラダーに取り組んでいることがわかった。しかし、五割の人たちの研修時間が、すべて時間外に実施されていることが明らかになり、負担に感じる原因になっている。積極的に取り組んでいる人は七〜八%であり、七割の人たちが負担に感じ、仕方なくやっているというのでは、問題である。本社看護部がいうように、「ライフスタイルに合わせた学習課題」というなら、研修は時間内におこなう、希望するテーマの研修を受けさせる、強制しないことを全施設で徹底するべきである。ILO看護職員条約では、「専門職労働の条件」の一つに継続教育訓練が必要であり、そのための教育参加を希望するものへの「便宜」として、「有給・無給の教育休暇の供与、労働時間の調整、研究訓練費の支払い」を与えるべきとしているが、時間も、費用も個人の負担にならない、研修制度が必要である。今回は問わなかったが、研修を受けた後、レベルを競わせるやりかたには、みんながどう考えているかを調査したい。自由記載欄に、「名札にラダーの評価のシールを貼るのはどうかと思う。患者さんに聞かれた時に困る」という意見があったが、もっともであり、職員に対するみせしめのようなやり方は、研修とはなじまない。
|