機関紙「日赤労働者」

2024年度賃金交渉妥結
平均1万7593円の賃上げで調印

 全日赤は、2024年度賃金改定について第78回定期全国大会の決定に基づき、全日赤中央闘争委員会の責任において、12月9日の本部本社間の団体交渉での到達点である平均1万7593円(4・54%)の賃上げをもって妥結することを決定し、本社に通告をおこないました。

交渉経過について

 (1)2024年度の賃金闘争は、連合は「昨年を上回る定期昇給分を含めて5%の賃上げ」を要求し、賃上げ額は33年ぶりの5%台の大幅賃上げとなる情勢のもとで始まりました。全日赤は、2月3日から4日に中央委員会を開催し、要求アンケート結果から本俸一律3万2000円(体系是正を合わせて4万円以上)の賃上げ要求を決定しました。また、春闘統一要求書を2月22日に提出しました。
 (2)回答指定日の3月13日の団体交渉で、本社は「従来どおり世間並み確保には変わりない。回答は差し控えたい」と有額回答も賃上げの姿勢も示しませんでした。
 (3)3月27日の団体交渉において、本社は「令和6(2024)年の給与引き上げ改定にむけた検討を前向きにすすめたい」と賃上げ姿勢は示したものの、具体的な改定額や改定時期の回答はしませんでした。
 (4)4月21日、第2回単組・地方協代表者会議を開催し、春期決着に向けてストライキの回避基準を決め本社追及をおこなうことを意思統一しました。4月23日の団体交渉で、本社が3月27日に回答した内容の文書確認することを本社は了承しました。また2024年度の診療報酬改定で、医療機関で働く職員の賃上げを目的としてベースアップ評価料(ベア評価料)が新設されましたが、職場や職種が限定されるなど内容は不十分なものでした。
 (5)第78回定期全国大会において、2024年度賃金確定および年末一時金を含む秋年末の闘争方針を確立しました。
 賃金交渉における本社回答については、10月6日に開催する第1回地方協代表者会議での議論を踏まえ中央執行委員会の責任において判断し、次期機関会議にて事後承認を得ることを大会で決定しました。
 (6)7月30日におこなった「経営説明団交」で、本社は、医療特別会計がコロナ補助金の減少で医業収支が赤字であるが、年金資産の運用利回りが想定を上回り退職金給付の負債計上額が減少し総収支は黒字。一般会計の社資収入は漸減傾向。福祉施設特別会計は、高齢者施設での稼働率上昇と児童福祉の措置費増額により収入増。血液事業特別会計では、必要血液量を確保し安定的な供給ができていると説明がされました。
 (7)人事院は8月8日に2024年度の国家公務員給与に関し、官民格差「1万1183円、2・76%」に基づく月例給の改定と、一時金については0・05月引き上げなどを柱とした、3年連続の引き上げ勧告をおこないました。勧告の骨子については、高卒初任給を2万1400円引き上げ、医療職(三)の短3卒(高卒後3年課程修了)看護師初任給を3万600円、福祉職初任給を2万6700円引き上げで、若年層に重点を置いた全俸給表を引き上げるとしました。
 (8)9月4日の団体交渉にて、本社は「水光熱費や材料費の高騰もあり、職員の8割を占める医療事業の経営は厳しく、先行きは不透明である」として「賃上げはおこなうが、実施時期は令和7年3月1日とする」と世間とは異なり、4月に遡らない回答をしました。また、ベア評価料について本社は「ベア評価料を賃上げの原資に使うので、施設によっては特殊勤務手当の廃止や削減がされる」と回答し、全日赤は「現給保障を超えない職員にとっては、俸給表が変わっても賃上げにもならず、特殊勤務手当が無くなれば実質的には賃下げになる。全ての職員が実感できる賃上げをすべきだ」と、本社に再考を求めました。
 (9)10月6日に開催した第1回地方協代表者会議では、(1)現給保障を超える賃上げ・4月遡及は当たり前の施設内世論を高めるため「賃上げ署名」を集めきる、(2)勤務評定結果の一時金反映の提案は勤務評定そのものが反対であり認められない、会議での意見を踏まえ、「職場の切実な賃上げ必要の声の大きさを示すのが署名であり、今後のたたかいの方向性が決まる」と、中央労働委員会(中労委)へのあっせん申請も視野に入れ、協定破棄等に至らないよう交渉することを意思統一しました。
 (10)11月6日の団体交渉において、全日赤は「賃上げ署名9288筆を本社に提出し、「全ての職員が実感できる賃上げと4月実施時期」を追及しましたが、本社は「現下の経営状況は厳しく前回の回答が最大限の回答である。前進回答を持ち合わせていない」と、かたくなな姿勢を変えませんでした。しかし、本社は「全日赤の要求である『薬剤師確保調整手当』を新設する」と提案しました。全日赤は本社提案を受け、持ち帰り検討することとしました。
 (11)11月11日に、全日赤は、薬剤師確保調整手当の本社提案に対する意見聴取をおこないました。11月28日の団体交渉において、組合員(薬剤師)などから出された質問や意見を本社に問い、本社は「この手当は処遇改善が必要であるか否かで支給要否を判断するもの。施設の収支が赤字であることのみで判断すべきものでない。また、施設長が必要であると判断したことを踏まえて、適切に承認手続きがおこなわれるものと考える」と回答し、本社は回答内容の文書確認を了承しました。また、評定結果の勤勉手当への反映について、本社は「期末手当と勤勉手当の比率は『7対3』のままにする。職能等級の適用を受ける職員(G/P1~G/P4)は、基本額を下回らない(基本額より低い場合は基本額を保障)」と第3次提案をしました。
 (12)12月1日の中執において、「実施時期が2025年3月からには不満はあるが賃上げであること、今回の俸給表引き上げで現給保障を超える職員が増えること、薬剤師確保調整手当創設は評価できる、運用面での交渉議事録を取り交わす約束がとれたこと」などを踏まえて妥結することを決定し、2月に開催する第1回中央委員会において事後承認を得ることとしました。
 (13)本社に対し12月9日の団体交渉において、全日赤は妥結表明をしました。また、本社は「勤務評定の運用状況について全日赤より懸念が示されてきたことから追加提案する。実施時期を1年延期し、令和8(2026)年4月とし令和9(2027)年冬期勤勉手当から反映する」との4次提案をしました。

2024年度賃上げ内容

 (1)今年度は、1万3865円(3・58%)の引き上げ、定昇込みで、1万7593円(4・54%)の賃上げを回答させました。初任給層では、大卒事務2万3800円、高卒看護助手2万1700円、6大卒医師2万6200円、短3卒医療技師2万6100円、短3卒看護師2万7300円、短大卒保育士2万5900円と若年層に厚い大幅な引き上げとなっています。再雇用職員俸給表も含め全俸給表での引き上げで現給保障を超える職員も増えますが、一方で現給保障を超えない職員は定期昇給すらなく、十分と言える回答ではありません。
 (2)人事院勧告の2024年4月実施に準拠せず、2025年3月の実施時期は納得できるものではありませんが、勤務評定結果の一時金反映提案の譲歩を引き出したことと実施時期を延期させたこと、重点課題である薬剤師確保調整手当の創設回答を引き出せたことは、署名の積み上げ、「一言メッセージ」の本社要請FAXや各単組がストライキを構えた全日赤のたたかいの結果と言えます。

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