機関紙「日赤労働者」
2023年度賃金交渉妥結
平均5058円の引き上げ
全日赤は、2023年度賃金改定について第77回定期全国大会の決定に基づき、全日赤中央闘争委員会の責任において、12月1日の本部本社間団体交渉での到達点である平均5058円(1・31%)の賃上げをもって妥結することを決定し、12月15日に本社に対し通告をおこないました。
交渉経過について
(1)2023年度の賃金闘争は、連合は「5%の賃上げ」を要求し、岸田首相も「インフレ率を超える賃上げが実現」をよびかけ、物価上昇や人手不足などへの対応を背景に、1994年以来の30年ぶりの3%台の大幅賃上げとなる情勢のもとで始まりました。全日赤は、2023年2月4日に中央委員会を開催し、要求アンケート結果から本俸一律30000円(体系是正を合わせて40000円以上)の賃上げ要求を決定しました。また、春闘統一要求書を2月22日に提出しました。
(2)回答指定日の3月8日の団体交渉で、本社は「従来どおり世間並みを基本とする。まだ回答できるに至っていない」と有額回答も賃上げの姿勢も示しませんでした。
(3)4月23日、第1回地方協代表者会議を開催。春期決着に向けてストライキ回避基準を決め本社追及をおこなうことを意思統一しました。4月25日の団体交渉で、「全日赤の賃上げ必要との思いから主張している」と理解するとの本社見解は、本社が間接的に「賃上げ必要」と理解したものと受け取りました。
(4)第77回定期全国大会において、2023年度賃金確定および年末一時金を含む秋年末の闘争方針を確立しました。
賃金交渉における本社回答については、10月9日に開催する第1回単組・地方協代表者会議での議論を踏まえ中央執行委員会の責任において判断し、次期機関会議にて事後承認を得ることを大会で決定しました。
(5)8月4日におこなった「経営説明団交」で、本社は、医療特別会計が黒字であるにもかかわらずコロナ補助金を差し引いた医業収支が昨年と比べると赤字幅が増加していることを強調しました。
(6)人事院は8月7日に2023年度の国家公務員給与に関し、官民格差「3869円、0・96%」に基づく月例給の改定と、一時金については0・10ヵ月引き上げなどを柱とした、2年連続の引き上げ勧告をおこないました。勧告の骨子について、高卒初任給を12000円、医療職(三)の短3卒(高卒後3年課程修了)看護師初任給を13900円、福祉職初任給を12800円引き上げで、若年層に重点を置いた全俸給表を引き上げるとしました。
(7)9月7日の団体交渉にて、本社は世間が賃上げであることを認識しながらも、「令和4年度の決算における医業収支が486億円の赤字であり、コロナ禍で1割程度減少した患者が戻る見通しはなく、慎重に対応をとらなければならない」として「賃上げはおこなうが、実施時期は令和6年3月1日とする」と世間とは異なり、4月に遡らない回答をしました。また、薬剤師確保手当の新設、人工透析作業手当の新設、通勤手当の改善、非正規の処遇改善については「10月10日の意見交換の場を踏まえて協議する」と回答しました。
(8)10月9日に開催した単組・地方協代表者会議では、(1)4月遡及は当たり前の施設内世論を高める、(2)勤務評定結果の一時金反映の提案は勤務評定そのものが反対であり認められない、(3)10月17日に本社より「同性パートナーシップ制度、非正規の処遇」などの提案がされる予定であり、会議での意見を踏まえ、中央労働委員会(中労委)へのあっせん申請も視野に入れ、協定破棄等に至らないよう交渉することを意思統一しました。
(9)10月10日の労使協議会(手当関係勉強会)では、(1)薬剤師確保手当、(2)人工透析作業手当、(3)通勤手当、(4)非正規の処遇改善の議題に絞り、職場の実態とデータを示しながら、意見交換をおこないました。
(10)10月17日の団交において本社から、(1)同性パートナーシップ等の社内取扱い、(2)嘱託・臨時・パート職員の処遇改善、(3)在宅勤務の制度化、(4)医師の働き方改革への対応についての4提案がありました。
(11)11月8日の団交において、全日赤は「賃上げ4月実施」を追及しましたが、本社は「医療を取り巻く現状は厳しい。実施時期変更は持ち合わせていない」と、かたくなな態度を変えませんでした。また、本社は「10月10日の勉強会の議論を踏まえてさらに協議を深めることはやぶさかでない」と手当要求については前向き姿勢を示しましたが、他の前進回答はありませんでした。
(12)12月1日の団交において、本社より賃上げ実施時期の前進回答はなかったものの、勤務評定結果の一時金反映の実施時期の再提案(協議不十分にて実施時期を1年延期する)、手当改善要求関係の文書確認をすることなどの回答がありました。
(13)本社に対し12月15日の団交において、全日赤は妥結表明をしました。
勤務評定結果の一時金反映の実施延期へ
(1)今年度は、5058円(1・31%)の引き上げ、定昇込みで、9138円(2・37%)の賃上げを回答させました。初任給層では、大卒事務11000円、高卒看護助手12100円、6大卒医師10800円、短3卒医療技師11100円、短3卒看護師12600円、短大卒保育士12700円の引き上げとなっています。再雇用職員俸給表も含め全俸給表で引き上げとなっていますが若年層に重点が置かれており、現給保障対象者は定期昇給すらなく、十分と言える回答ではありません。
(2)人事院勧告の2023年4月実施に準拠せず、2024年3月の実施時期は納得できるものではありませんが、勤務評定結果の一時金反映の実施時期を延期させたこと、重点課題である薬剤師確保手当をはじめとする手当要求について『勉強会での議論を踏まえ、さらに協議を深める』ことを文書確認する回答を引き出せたことは、署名の積み上げや各単組がストライキを構え、毎日要請FAXを本社に届けるなど全日赤のたたかいの結果と言えます。