機関紙「日赤労働者」
賃上げ1月実施で妥結
2022年賃金交渉
全日赤は、2022年度賃金改定について第76回定期全国大会の決定に基づき、全日赤中央闘争委員会の責任において、11月9日の本部本社間団交での到達点である平均1431円(0・37%)の賃上げをもって妥結することを決定し、本社に通告をおこないました。
交渉経過
(1)第76回定期全国大会において、2022年度賃金確定および年末一時金を含む秋年末の闘争方針を確立しました。今年度の特徴は、(1)勤務評定実施阻止のたたかいを強化する。(2)2023年4月1日実施の新賃金移行に対する要求とその実現に向けて8月末にストライキを構えて交渉を開始する。(3)消える年休救出プロジェクトを推し進めることです。
また2022年度賃金交渉について、賃上げ要求は、2022年春闘統一要求にて提出した「本俸一律3万1000円の賃上げと体系是正を合わせて、4万円以上引き上げること」です。本社回答については、10月10日(日)に開催する第1回単組・地方協代表者会議での議論を踏まえ中央執行委員会の責任において判断し、次期機関会議にて事後承認を得ることを大会で決定しました。
(2)人事院は、8月8日(月)に2022年度の国家公務員給与に関し、官民格差「921円、0・23%」に基づく月例給の改定と、一時金については0・10月引上げなどを柱とした、3年ぶりの引き上げ勧告をおこないました。勧告の骨子については、高卒初任給を4000円引き上げ、医療職(三)の短3卒(高卒後3年課程修了)看護師初任給を4200円、福祉職初任給を4300円引き上げとなっています。しかし俸給表全体の改定には及ばず、若年層までの俸給月額の引き上げにとどまり、40歳代からは賃金据え置きで、もともと「寝たきり賃金」で40歳、50歳代になってもほとんど上がらない医療・介護・福祉職の賃金水準の改善にはつながらないものです。
(3)8月30日(火)の団体交渉にて、全日赤は「世間は賃上げしており、日赤の昨年度の経営状況はこれまでにない黒字となっている。さらに、長引くコロナ禍や物価の高騰により、生活もままならず、職員は疲弊している」と追及しましたが、本社はコロナ禍で頑張っている職員に感謝を述べながらも「医業収支は83億円の赤字、補助金により黒字を確保できている状況であり、患者数も1割程度減少している。コロナ後に減少した患者が戻ってくるかわからず、医療を取り巻く現状は厳しい」として「賃上げはおこなうが、実施時期は令和5年(2023年)3月1日とする」と世間とは違い4月に遡らない回答をしました。全日赤は、本社回答に抗議し8月31日(水)に1時間ストライキを決行しました。
(4)9月29日(木)の団体交渉において、本社は「コロナ禍、物価高騰など生活に影響がでており、全日赤から実施時期見直しの強い要求もあり、再度検討した結果、実施時期を来年1月とする。遡及はしない」と回答しました。全日赤は急遽設定した9月30日(金)の「指名スト」は中止をし、今後のたたかいについては、10月10日(月・祝)に開催する単組・地方協代表者会議にて意見を聞いた上で決定することとしました。
(5)単組・地方協代表者会議では、さらなる前進回答を求めて本社団交を申し入れて、出された回答については、執行委員会が判断することにしました。11月9日(水)に団体交渉をおこないましたが、賃上げ実施時期や俸給表の改定については、変えさせることはできませんでしたが、薬剤師確保手当や透析作業手当、待機手当など手当改善要求に関する労使勉強会を開催するなど別の場での協議することを文書確認することを引き出しました。
2022年度賃上げ内容
(1)2020年と2021年は賃上げがありませんでしたが、今年度は、1431円(0・37%)の引き上げ、定昇込みで6419円(1・68%)の賃上げを回答させました。しかし、俸給表全体の改定には及ばず、若年層までの俸給月額の引き上げにとどまり、40歳代からは賃金据え置き(全日赤モデル賃金で、大卒事務37歳以上、高卒看護助手46歳以上、6大卒医師は34歳以上、短3卒医療技師37歳以上、短3卒看護師36歳以上、短大卒保育士40歳以上が賃上げなし)であり、十分と言える回答ではありません。一方、初任給層では、大卒事務3000円、高卒看護助手4100円、6大卒医師3800円、短3卒医療技師4100円、短3卒看護師4600円、短大卒保育士4300円の引き上げとなっています。
(2)実施時期についても、人事院勧告の2022年4月実施に準拠せず、2023年1月実施は十分と言える回答ではありませんが、第一次回答の2023年3月実施を2ヵ月早めたのは、各単組がストライキを構え、毎日要請FAXを本社に届けるなど全日赤のたたかいの結果として引き出した前進回答と言えます。
2023年4月新賃金について
(1)2022年度の俸給表改定と併せて、既に協定している2023年4月実施の新賃金の俸給表の書き換えも合意しました。
(2)9月29日(木)の団交にて、本社は新賃金における昇格の考え方を次のとおり示しました。また現在在籍する職員の新賃金への移行に関しても基準号俸をもとに切り替えていくとの考えは以前から示しており今回も確認しました。
(3)移行に関して、グレード決定は施設長がおこないますが「基準号俸」を参考にして、G/P1とG/P2は分けられます。2023年3月末の俸給月額が「基準号俸」の俸給月額以下はG/P1の俸給表から同額または直近下位を探し、「基準号俸」の俸給月額を超える場合はG/P2の俸給表から同額または直近下位を探して切り換えます。そして4月1日の俸給は、定期昇給分(4号俸)を加えた号俸とします。
(4)切換前の俸給月額は、3月31日の俸給月額ですが、現行制度において、4月1日に昇格していた者の切換前の俸給月額は、昇格をしたものとして取り扱います。
(5)院長だけであった「年俸制」を副院長にも適用することによる「給与要綱」「定年退職規程」「退職一時給与金等支給規程」「休業補償等規則」の協定についても合意しました。
今後のたたかいについて
(1)G/P3への格付けに関して、本部は、統一要求に記載した経験年数をもとに切り換えるよう本社を追及します。施設では本社の指示により4月新賃金での格付けの案を本社に提出しています。単組では、本社に報告した内容における「G/P3とした基準」を明らかにするよう施設追及をおこなうとともに、統一要求に基づく切換を目指しつつ、施設毎のG/P3とする基準(ルール)を協議します。
(2)勤務評定は公正・公平な評価とはならないことや勤務評定が職場のチームワークを壊し、働きがいを奪う危険な制度で医療や福祉の職場にはなじまないことを報せながら、勤務評定を廃止するまでたたかいます。